2010年4月

1Q84から民藝まで

世の中をにぎわせている村上春樹の「1Q84」を読み終わりました。20年近く村上春樹を読み続けているものとしてはこの社会現象を好ましく思うのの、まあ複雑な心境であります。
(以下ネタバレ無しです。ご安心を)

村上春樹も「来る所まで来たなあ」と思いつつ、ひとことではなかなか言い尽くせないというのがこの小説への僕の感想なのですが、端的に言っても完成度はかなり高いです。ストーリーはもちろん、キャラクター設定やいつもの比喩的表現も気持ち良いくらいにはまっていて純粋に娯楽として楽しめる総合小説——村上春樹が近年目指している境地——を思う存分堪能できます。今回そんな中でもすごいなあと思ったのが名台詞の数々。

「説明しなくてはそれがわからんということは、つまりどれだけ説明してもわからんということだ」
——1Q84 BOOK2 P181 

「暗がりのなかにいる方がものごとはむしろよく見える」
——1Q84 BOOK2 P188

「心から一歩も外に出ないものごとなんて、この世界には存在しないんだ」
——1Q84 BOOK2 P248

真実を描き出すことが小説の価値であるとするなら、小説中に用いられるこれらの台詞はみごとに真実を描き出しています。それぞれの文脈で使われる台詞は抜粋しても意味を失わず、離れることによってよりいっそう象徴的にものごとを照らし出しているように思えます。「これらは一般論だよ、特別なことではない」と言う人もいるかと思いますが、一般論でしか語ることができない事柄というのも世の中にはたくさんあって、重要なものごとほど一般論でしかつかみ取れないのではないでしょうか。

鼠は笑った。「まったく、もし一般論の国というのがあったら、君はそこで王様になれるよ」
——羊をめぐる冒険 P383(村上春樹)

この一般論というものを突き詰めて行くと、僕の好きな「民藝」とも繋がってきて面白いです。一般論から離れずに、どうすれば世の中が良くなるかデザインで回答を出そうとしたのが民藝だと思っています。切り口がデザインだと民藝になり、生きる姿勢だと宗教や哲学や村上春樹のような小説になる。民藝とは「所謂世の中で言われている木彫りの熊の人形のようなもの」ではなくて「ユニクロ的な物」なのですが、この辺はひと言では言えないので今度きちんとアップしたいと思います。

読めるかな?

今年の初めに見つけていた看板なのですが…。
「おめでとう=寿」で新年の喜びを表現しているのだと思います。
かっこいいなあ。新代田の駅近くで。

リンゴの梱包について

リンゴと言っても、食べる方のリンゴではなくパソコンのアップルについてです。
アップルのプロダクトデザインやインターフェイスのデザインの素晴らしさは
他でたくさん語られているので、今回はそれらの製品が包まれているパッケージについて。

最近MacBook、Time Capsule、iPhone、MagicMouseなどを購入する機会があり、
楽しく使っているのですが
それらが届いて使う前にパッケージをみるとそのデザインにいつも感動します。
コストをたくさんかけて、製品を幾重にも包んで送るのではなく、
合理的かつ安全に美しく送るということにかけては——僕の知る限り——アップルの他に
無いでしょう。

なぜならアップルのデザインに対しての明確なビジョンがあるからです。

世界中の消費者に製品が壊れずに安全に届ける梱包には、相当の知識とスキルが要求されます。
写真を見てもらえればわかる様に隙間なく製品が収まるプラスチック状の容器が更に、
箱内に収まり、蓋裏側のスポンジで固定されるパッケージです。
とてもシンプルですが無駄がなく、それぞれの部位が果たしている役割が明快なよいデザインです。
店頭で持って帰る場合も考慮され持ち手まで付いています。

デザインって何?の答えがそのままここにはあります。

パッケージなんて所詮送れれば良く、大事なのは製品本体だよという企業は
デザインを一面的にしかとらえていません。
製品が安全に合理的に送れるか真剣に考えることで、どれだけのメリットがもたらされるか、
そこまで考えて商品のデザインが完了すると思います。

不完全な状態で送ることで製品への破損や不具合をどれだけ引き起こしているでしょう。
製品が送られる過程でどれだけの人が製品のパッケージを目にするでしょうか。
箱の大きさが微妙に違うことで、または一目で中身に何が入っているか分からないことで
どれだけのデメリットがあるでしょうか。
商品全ての箱の大きさをトータルで管理することでどれだけのメリットがあるでしょうか。
アップルはそれらのことを全部想像し、常に最善で最適な解決策を取っています。

例えば別々の時期に買ったTimeCapsuleの横幅とiPhone3gの正面幅がきっちりと揃っています。
ここが揃っていることがデザインであり、
この一端にアップルのデザインへの意識の高さが現れています。
デザインとはおしゃれでかっこいいことだけでなく、
箱の幅まで考えることがデザインであるんですよという好例です。

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