2013年12月

年末年始の営業のお知らせ

 
誠に勝手ながら下記の通り、休みをいただきます。

◎年末年始休業期間
2013年12月30日(月)~ 2014年1月5日(日)

ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願いいたします。
 
 
すいせい
樋口賢太郎 
 
 
 

砂漠へ 1

面積的にはそんなに広くないが、モロッコの東側にはサハラ砂漠が広がっている。
サハラ砂漠はアフリカ大陸の1/3(!)を占めていて、
東はエジプトから西はモロッコまで続いているが、完全な砂丘は実は少なく
大部分は砂利ほどの大きさの石と砂などで構成されている。
モロッコ国境付近にあるメルズーガという街からは、完全な砂丘に行くことができるらしい。

今回の旅行で砂漠に行きたいと考えていた。
日本のような湿潤の国にいると、カラカラに乾燥した気候へのリアリティがなく、
砂と空だけで構成される世界に身を置いたら、どういった気持ちになるのか興味があったのだ。
あるいは砂漠をひとつの現代アートと捉えることもできる。
花粉を部屋に敷きつめるヴォルフガング・ライプのインスタレーションの様に、
広大な面積に砂を敷きつめる作品としての砂漠を見てみたかった。

モロッコはなんとなく赤茶けた大地のイメージがあるので、
砂漠ばかりが広がっているのかと思っていたが
実際に行ってみると木々も多く、都市部にいるかぎり砂漠っぽくもない。
いや、正確には、乾燥した地域が主体の国ではあるが、
他のさまざまな気候も混在していると言うべきだろう。
例えば車でメルズーガからフェズという街まで6時間ほど北上すると、
10分単位で車窓はめまぐるしく変わる。
砂丘はもちろん、岩肌がむき出しの地帯から、アトラス山脈の高山地帯、草原、森林までと、
変化に富んでいてとても一国の一季節の気候とは思えない。
5分くらいで砂漠エリアから森林エリアまで移り変わってしまうので
気候のサンプリングをするとしたら、こんなにうってつけの国もないんじゃないかという気がする。
この多様さはモロッコを訪れて驚いたことのひとつだ。
 
砂漠へはマラケシュからツアーで向かった。
自力で行くことも可能だが、世界遺産なども効率よく廻りたかったのでツアーを前日に申し込んだ。
2泊3日の日程を共にするメンバーは、フランス人とイタリア人のカップル、アラビア人の母と娘、
ポルトガル人カップル、ドイツ人の女子二人組、フランス人夫婦、カナダ人の女子二人組。
コミュニケーションは英語。ガイドもフランス語と英語なので、
楽しもうと思うと英語はある程度できたほうがいいかも知れない。日本人は僕だけだった。

ツアーバス@アトラス山脈の中腹。最上の写真も同じ場所から。その下はアトラス山脈を超えた後。

年齢層も異なるさまざまな国の人々と話すのは楽しい。
食事時などは大袈裟にいえば世界会議みたいなものだ。
意外なほど日本のことを他国の人は知らないし、他国のことを僕は知らない。
例えば今回ポルトガルの人口が一千万人ほどしかいないとはじめて知った。

多様性を知ることは旅の目的のひとつだ。
それは視野が狭くなることを防いでくれる。
視野が広い人には抜け出せないほどの絶望は来ないだろうと楽観的に考えている。

関係ないが、外国人との会話の場合、年齢を聞かないのが面白い。
仕事のことを詳細に話しても年齢には及ばないのは
おそらく日本語には敬語があって、英語にはないからだと推測する。
 

初日の一番の見所は世界遺産にもなっているアイト・ベン・ハドゥという集落だろうか。

ここは『アラビアのロレンス』をはじめさまざまな映画のロケで使われているので
記憶にある人も多いかもしれない。
マラケシュからアトラス山脈を超えて数時間のところにある日干し煉瓦の集落で、
モロッコの他の多くの街と同じく防御のために丘につくられている。
このような要塞化された村はクサル呼ばれ、所々に銃眼がある塔がそびえ立ち、
頂上には見張り小屋がある。現在でもまだ10人ほどの家族が住んでいるが、
ほとんどは集落の脇を流れる川の対岸の新しい街に移ったらしい。
川は乾期なので干上がっていたが冬場は水深2mにもなるとガイドは言っていた。

この集落は離れて眺める方がいい。家の内部には入れないし、
例によって窓は小さいので、歩いているだけでは特にエキサイティングではないと思う。
近くで見るとかなり傷みが進んでいるところもあり、修復している人を見かけた。

風が強い頂上からは、荒涼とした大地をかなり遠くまで見渡すことができる。
確かにこの見晴らしなら敵をすぐに発見できるだろう。
川の跡にうっすらと緑がある以外は草木もない乾いた山や平原が広がっている。

もしここで生まれていたら何の仕事をしているのだろうと想像する。
モロッコの識字率は50%ほどらしい。失業率も20%を超えているので、
昼間からぼーっとしている男達を目にすることが多い。
別にモロッコに限らず、ベトナムや中国でもそういう男はよく見かけた。
(なぜか暇そうにしている女性は見かけないが)
こういうのを見ていると、勤勉に働くこと(つまり日本人がいつもやってること)って
グローバリズムが生み出した幻想なのではと思ってしまう。
識字率や失業率やGDPはグローバリズムや資本主義というものさしがあって初めて成立する。
グローバリズムはひとつの必然かもしれないが、問題はそのものさしで計れないものに
価値がなくなってしまうことだろう。
僕にとって暇そうにしている男達を見るのも多様性を知ることのひとつだ。

アイト・ベン・ハドゥを見終わるとちょうどお昼なので、新しくできた街の方で昼食をとる。
羊のタジン鍋とクスクスを選ぶ。モロッコはイスラム圏なので豚肉は食べず、
それ以外の肉(ラクダなども)と野菜をタジンで煮込んだ物をメインとすることが多い。
海に面しているので魚の煮込みもある。
モロッコ料理はもっとスパイシーかと思っていたが、わりとあっさりしていて
日本人の味覚には合うのではないだろうか。タジンで香辛料を使ったものには遭遇しなかった。

食べ物でハマったのはフェズという街のサンドイッチ。
ホブスと呼ばれる平べったいパンなどに挽肉やソーセージを挟んで食べる。

ケースから好きな具を選ぶ。おすすめは?と聞くと、全部混ぜたやつというのでそれにした。

羊肉のミンチ、レバー、ソーセージ、鶏肉、タマネギなどを混ぜながら炒めてパンに詰め、
トマトソースをかける。トッピングにオリーブ。思わず声が出てしまうほどうまい。

他に印象に残っているのはクミン玉子。
夜、フェズの路地を歩いていると道端におじいさんが座り玉子をむいている。

これはなんだ?と並んでいるお客に訪ねると、とにかく食べてみろと言われた。
温泉玉子くらいの柔らかさの玉子を、殻の一部分残してむき、
そこに粉を振りかけて渡してくれる。いまにもこぼれ落ちそうなのを受け取り、
ひとくちで食べると玉子とクミンと塩が口の中で溶け合った。
おいしい料理とはつねづね化学変化だと思っている。AとBを一緒に調理し、別のCに変化させる。
変化がないとそれぞれの食材をただ食べるだけになってしまう。
そういう意味でこの玉子料理は確実に別の何かに変化していた。

ラマダン開けによく食べるハリラというスープはやさしい味。これもスパイスは使っていなかった。

エスカルゴはくせがあり全部食べれなかった。

ミントティは甘い。宗教上禁止のアルコールの代わりとしてモロッカン・ウイスキーとも呼ばれる。

モロッコ料理は素材の味を大事にし、手を加え過ぎないという意味では和食に近いのかもしれない。
おおぶりのじゃがいもとにんじんが煮込まれたタジン料理などは
肉じゃがなんじゃないかとひそかに思っている。

続く

日程

 
備忘録を兼ねて旅行の日程を付記しておきます。
 

10月23日(火)  飛行機     東京→ドーハ
   24日(水)  飛行機     ドーハ→バルセロナ→マラケシュ
   25日(木)  モロッコ    マラケシュ
   26日(金)  モロッコ    砂漠ツアー
   27日(土)  モロッコ    砂漠ツアー
   28日(日)  モロッコ    フェズ
   29日(月)  モロッコ    フェズ
   30日(火)  船       フェズ→シャウエン→タンジェ港→アルヘシラス港
   31日(水)  スペイン    アルヘシラス→グラナダ
11月 1日(木)  スペイン    グラナダ→バルセロナ
    2日(金)  スペイン    バルセロナ
    3日(土)  飛行機     バルセロナ→ドーハ
    4日(日)  飛行機     東京
 

2週間くらいでも2カ国廻ると、そんなにゆっくりもしてられず、
けっこう移動が多い旅行になりました。
飽きっぽいのでひとつの都市でも、一日くらい滞在すれば割と満足してしまうのですが、
スペインをもう少し見たかったと思います。

印象に残っているのは
モロッコだとメディナ、アイトベンハドゥ、砂漠、タムグルートの陶器、シャウエン。
スペインだとコスタ・デ・ソル、グラナダ、アルハンブラ宮殿、サグラダファミリアなどでしょうか。
取り上げられそうなのは、アップします。
しかし不思議なもので、印象ってその時はそうでもなかったのに
後になって鮮明に浮かび上がってくることってありますよね。
文章を書いていると、印象の優先順位が変わり面白いです。
自分でもなにが出てくるのかわからずに回す、商店街のガラガラくじのようです。

移動が多いと知らず知らずのうちに疲れが溜まるようで
旅の後半は風邪をひいてしまい、帰国後も本調子に戻るまでに時間を要しました。
バックパックの旅だったにもかかわらず、
あとさき考えず民藝の品々を買い込んだのが、主な原因だと思われます。
最終的には荷物が20kg近くにもなり、
キャスター付きスーツケースにしとくんだったなあと何度思ったことか。
砂漠にも行くし、モロッコという土地柄もあるしで、バックパックを選んだのですが、
モロッコはスーツケースでも大丈夫のようです。

まあそもそも買い過ぎなんですよねー。
いい物を見たらリミットが外れてしまい、どうやって持って帰るかなど考えずに買ってしまいます。
もちろん運ぶ段になったらとてもとても後悔するのですが、
これがいざ目の前にするとあらがうことができないんだよなあ。学習能力ゼロ。ひとつの病ですね。
以前東南アジアを一ヶ月くらい旅行した時もだいぶ買い込みましたが、
今回は量が倍ぐらいになったことから病はだいぶ進行しているようです。
こじらせずに、今後うまく付き合っていければいいのですが…。

その戦利品ももちろんアップする予定です。

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