2016年8月

一瞬は永遠

storm_s3

その画家は言った。

一瞬は永遠だと。
一瞬が永遠になりうるのだと。

たかだか数十年しか生きていない人間の絵が何百年もの間、
人々を魅了し続けるのは不思議じゃないかい?
万有のエネルギー法則からすれば、
費やした年数と消費される年数は同じになるはずなんだよ。

海に臨むアトリエは絵筆や描きかけの作品などで散らかっている。

黙って聞いていると画家はさらに話を続けた。
窓の外では狂ったように草木が揺れ、横殴りの雨が降っている。

描いていると、自分の能力以上の表現が出てくることがある。

時代を超越した普遍的な魅力とでも言うべきか。
その瞬間に起こるのは、生きてきた年数を遥かに超えた
永遠とも言える時間の定着なんだ。
つまり一瞬のうちに永遠を定着することができる。

だから寿命以上に絵が残ることはなんら不思議ではないんだよ。

話はぷつりとそこで終わった。

嵐が近づこうとしているのか、
風雨はさらに激しくなり、舞い上げられた砂が窓ガラスにあたる
パラパラという音が聞こえる。

猛烈な勢いで移動していく暗雲を見ながら、
画家が再び口を開くのを待った。

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