すいせいブログ

加茂錦のお話 2

経営戦略とデザイン戦略をきちんとマッチングさせる為に商品だけでなく
ロゴマークをデザインし直し(上記)、ポスターも制作しました。
ロゴマークなどをきちんと機能させれば加茂錦の伝えたいことをもっと明確に伝達できるからです。

日本酒のデザインの難しさは「伝統性」と「現代性」にあります。

例えばIT会社のロゴをデザインしてくださいと言われた場合には日本の伝統性とはほとんど関係なく
デザインできると思います。なぜならITの出自が伝統文化とは無縁だからです。

しかし日本酒は連綿と受け継がれている日本文化と密接に関わってきました。
古事記では八岐大蛇を退治する重要なモチーフとして登場しますし、
現在でもお祝い事や神事等とは切っても切れない関係です。

そういう歴史的背景を持つデザインは実はデザイナーがうかつに手を出せない畑でもあります。
きちんと日本文化を理解し、良い部分を受け継がなければ
表面だけをまねた薄っぺらいものになってしまうからです。
いわばフェイクの表層だけのデザインは短期的に売れことはあるかも知れませんが
市場で長く戦うのは難しいでしょう。
かと言ってありきたりの筆文字で描かれたロゴだと他社製品と差別化ができません。
市場で長く戦えるというのが「現代性」の意味です。

いかに新しい価値を作れるかが重要なポイントなので市場で埋もれてしまっては意味がありません。
ロゴをデザインし直したのもそういう理由からです。

新しいロゴを作るにあたって加茂市を数日かけて探索し、イメージを固めました。
新潟県中部に位置する加茂市は「越後の小京都」と呼ばれるなかなか風情あるところです。
名前の加茂も古くからゆかりがある京都に由来し、街の中心を粟ヶ岳を源泉とする加茂川が流れます。
加茂錦のお酒はその加茂川の伏流水を使って作られます。

ロゴマークでそのストーリーをビジュアライズしました。
上部の山が粟ヶ岳で、流れるようなラインは加茂川を表しています。

下部のラインは「加」の中国の古い文字の偏を用いています。

加茂錦のお話 1

現在新潟県加茂市にある「加茂錦」という
日本酒蔵元のブランディングを担当させていただいております。

実は自分が新潟生まれ(熊本育ち)ということもあり
仕事の話をいただいた際はどこか懐かしく
他の仕事とはちょっと違った心持ちでお引き受けしました。

数年前に初めて社長さんにお会いして以来、いろいろな話をさせていただいているのですが
最初はデザインの概念を共有させていただくことから始めました。

世の中でデザインと言うと、何か飾りのような要素を付け加えたり
イラストや絵を描く職種だと思われていることがとても多いと思います。
これは経験則から導きだされた答えなのですが
デザインを依頼された時点でたいてい商品の名前も、売り方も、
ターゲットも、値段も決まっています。
デザイナーに求められていることはただ単にラベルの絵作りだけ。
デザイナーとはイラストレーターのことかと思うこともよくあります。

脚色すること自体を完全に否定はしないですが(言ってる意味が分かる時もあるので)
全ての局面で脚色したり絵を描くことで問題が解決することはほぼ無いと思います。

デザインとはデザインすることで何かの効果を生まないといけません。

簡単に言うとパッケージであれば沢山その商品が売れることがデザインの効果であるし、
ロゴマークであればその会社の目的がなるべく多くの人に認知されるのが効果であります。

それぞれの目的と効果を冷静に考えていくと
単純に何かを飾るということで目的が達成され、効果が生まれるとはとうてい思えないはずです。
時には明治チョコレートのように
何もデザインしないという選択肢が結果的には効果を生むことだってあるはずなので・・。

例えばパッケージにおけるデザインとは、まず初めに優れた商品のアイデンティティを確立し
そのアイデンティティを、そのままパッケージに反映することです。
NO IDENTITY , NO PACKAGE 。つまりアイデンティティが全て。
核となるアイデンティティがぶれていては当然デザインもぶれるので
依頼された時点でアイデンティティがぶれていたら
僭越ながらそちらも修正させてもらわなければなりません。
(余談:これはデザイナーを代表して申し上げるのですが
できればアイデンティティをつくる部分からデザイナーには参加させていただきたい。
その方が結果としてうまく行くし、良い商品ができると思います。)

そういうようなお話をさせていただいて
デザインには全部意味があり、感覚的に情緒的に仕事するのではなく
経営戦略にきちんと即したデザインをしたいとお願いしました。

いま加茂錦でとても売れているお酒に「米袋の酒」というものがあります。

簡単に言うと細長いプロポーションの米袋に酒瓶を入れたお酒です。
新潟は他の県とは違いの日本酒の本場というイメージがあります。
酒どころ、米どころ、ひいては水どころでしょうか。
優れたお米+よい仕込水+適した気候風土なので新潟のお酒は品質が高い。
そのようなイメージをデザインに生かさない手はありません。

そこで提案させていただいたのが米袋のお酒なのです。
新潟のイメージをパッケージにいかせないかと考えたときに
瓶が自然と米袋のなかに入りました。
<続く>

掲載されています!

現在発行の書籍にすいせいの仕事が掲載されております。
書店に行かれた際に手に取っていただければ幸いです。

◎ADC年鑑 2009
美術出版社/A4判/488ページ
寺岡有機農場のパッケージがADC賞にプレノミネートされ、掲載されております。


 

◎モダンジャパンスタイルデザイン
ピエブックス/A4判変型/224ページ
加茂錦「黄酒」が掲載されております。


 

◎デザイン事典 文字・フォント
株式会社モリサワ・+DESIGNING編集部/B5変型判/368ページ
REFARMが掲載されております。

美の発見

優れた画家が、美を描いたことはない。優れた詩人が美を歌ったことはない。それは描くものでなく、歌い得るものでもない。<br />
美とは、それを観たものの発見である。創作である。青山二郎
さすが青山二郎だなー。
美の本質をずはりいい当てている。

明治ミルクチョコレート

ちょっと前ですががっかりしました。

明治製菓+明治乳業の合併にともなうロゴリニューアル。

別にいままでのロゴが変わったのでがっかりしたわけではありません。
刷新されたロゴはよくできていると思います。

どこにがっかりしたのかと言うと、旧ロゴによって成立していたチョコレートのデザインに
新しいロゴをそのままはめ込んで成立させようとしたところです。

前のパッケージは旧ロゴがあってのデザインだと思います。
そのことをデザイナーは分からずに(或いはわかっていても差し替える判断をしたなら同じ意味)
デザインしてしまったようです。

デザインリニューアルは新しくデザインを作り上げるのよりも大変な仕事です。
なぜならいままでのお客さんと新しいお客さんの両方を満足させないといけないからです。
そういう意味でチョコレートのリニューアルは今までのお客さんをがっかりさせたと思います。

この場合、デザイナーが取るべき選択肢は以下のようなものがあると考えます。

1 旧チョコレートのデザインはそのまま残す。新しくデザインはしない。
2 旧チョコレートのデザインはそのまま残し、新しいロゴで新しいチョコレートのパッケージをデザインする。

僕だったら2を提案します。
長年愛されてきた商品は会社にとって財産です。
時にはデザインしないってこともデザイナーの仕事じゃないでしょうか。

日本民藝館展の収穫 !!!!

昨年度の日本民藝館展で買ったものが戻ってきました。
(民藝館展で買った物はすぐには手に入らず、期間中は展示されているため)

上 口巻モール小鉢 太田潤作
下 白掛一合壺 小鹿田焼 柳瀬朝夫作

ガラス製の器はあまり持ってないので、狙って買いました。
一合壺は小鹿田焼では珍しく飛び鉋も釉薬もなく、形が美しいので購入。

アート=デザイン考|今年の抱負

アートとデザインの違いには諸説あります。

アートは純粋に個人の表現であり、デザインは表現する前に機能するということが求められる。
デザインは個人のモチベーションが先にあるわけでなく、
困っている状況や問題を解決することが目的である。

なのでデザイナーは機能する点だけに留意すればよく、
自我というか個人のスタイルは捨て去るべきだと言われることも多いと思います。
個人の表現が目的になると機能すべき目的の妨げになるからでしょうか。

ちなみに僕は上記の説には懐疑的です。

もちろん機能すべき問題をクリアするのは前提条件になりますが
個人のスタイル云々に関してはちょっと違うかなと思っています。
と言うのも画家、デザイナーの違いはあっても、表現者個人の視点というものがあるからです。
その人の物の見方、どういう視点で世の中を見ているかはその人の世界観だと思います。

スタイルを否定するっていうのは
どうしてもその前提である世界観を否定しているような気がしてならない。
世界観なしにはその人も、作品も成立しないんじゃないでしょうか。
なのでデザイナー、アーティストの違いこそあれ
個人の世界観を通して表現するという意味では、両者の表現にそんなに違いはないと思います。

では優れている世界観とは何なのか?

僕はいい目を持っている人、見過ごしがちな風景の中から豊かで新しい価値観を見いだせる人が
いい世界観を持っているんじゃないかと思っています。(視覚に関係する職業前提です)

ものすごく特異な表現ではなく、同じ風景を見ていてもそこにわずかな違いを発見し
新しい「美=価値観」を提案できる人こそ、僕が真に目指すところであります。

と言いつつもとてもとても高い目標なので簡単なことではないですが
ま、年始なのでとりあえず抱負ということで。

二〇一〇 虎年


明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

茶の湯美術館

最近といっても結構前になりますが
CMのディレクションをしました。

茶の湯美術館

この美術館は岐阜の飛騨高山にあり
茶道に関するたくさんの品々が展示されています。
初代・長次郎から15(当)代・吉左衛門の樂家歴代の器を一堂に公開し、
別棟では人間国宝が作った器でお茶を楽しむことができます。

その美術館のテレビCMのディレクションをご依頼いただきました。

茶道の精神をきちんと理解しているかどうか分からないですが
僕は茶道を以下のように捉えています。

茶道とは
「意識を変えて日常を見ることでそこに非日常なものを見いだす事」

その非日常なものというのは「美」であり「新しい価値観」であります。

千利休が祖末な茶碗に美を見出したように
意識を変えることで
誰でも日常に美しさを発見することができると思います。
つまり既出でありきたりの美しい物を
茶室に集めることが茶道ではなく
新しい視点で物事を眺めることこそが茶道の本質であると。

その意味を反芻しながらこの撮影に望みました。

映像中にある灯籠や木や花はいつも美術館の庭にあるものです。
それぞれの物の背景に白い布を垂らすことで
いままでと違った見え方を提案できると思いました。

ただ背景を白くすることでいつもと違う風景になる、
或は美しいと感じてもらえれば嬉しいです。

日本民藝館展 !!!!

みなさん待ちに待った民藝館展の季節がやって来ましたよ。
と言ってもどれだけの人がこの話題について行けるか不安ですが・・・。

平成21年度 日本民藝館展
新作工芸公募展
2009年12月5日(土)~12月20日(日)

まあ民藝についての論争云々は置いておいて
現代の手仕事で良いもの見たいと思えばこの展示をおいて他にはないでしょう。
民藝館での展示は通常は企画展のみなのですが
この期間だけは日本民藝館大賞を決める公募展に様変わりします。
全国から現在手で製作されている優秀な道具が集まり、
さらにその展示物はすべて購入可能なのです。
(値段も民藝なのでリーズナブルですよ)
その展示も残すことあと数日。
http://www.mingeikan.or.jp/html/exhibitions-events-mingeikan.html
http://www.mingeikan.or.jp/
行かれたらとても豊かな暖かい気持ちになること請け合いですよ。

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