すいせい

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このブログはデザイナー樋口賢太郎が綴る日々のことです

幼児性を忘れないようにしよう

2024.06.30

デザイン職あるいはクリエイティブにまつわる職にとって大事なことはたくさんあると思われるが、
表題の「幼児性」はとても重要な意味を持つのではないかと、最近考えている。

幼児性とは何か? 簡単に言うと、自分の心に素直に従うことだと思う。
いや、ただの心ではなく少年のような心という注釈付きだ。

人は年齢を重ねるにつれて、鈍感になっていく(と考えている)。
そのことを「おじさん化」というと、性差別と指摘されそうだが、実際に男のほうがそういった傾向は顕著ではないだろうか。

義務教育を終えて社会人となり、30を過ぎるころにはだいたいおじさん化が始まる。
もしかしたらそれよりも前から始まっているかもしれないが
おおよそ社会に慣れてきたころから感覚が鈍麻していくと想像している。
(たぶん自分はなんでもわかっているという過信が、鈍感でもいいという甘えを生むのだろう←自戒を込めて)

服装や髪型に気を使わなくなり、世の潮流からも少しずつ距離が出てくる。
新しい音楽を探すこともなくなり、美術館や映画館などからも足が遠のき、
思考や好みが固定化して、動きがなくなる。
ときどき世の中とのギャップを感じることはあるが、まあ大丈夫と放っておくと、
もう後戻りできない状態になってしまっていることに、いつの日か気付く。
これが自分が考えるおじさん化のおおまかなイメージだ。

ひとは幼稚園や小学校の低学年くらいまで鋭敏な感覚を持っている。
子供は五感が全方位に開いているので、あらゆることに興味があり、
放っておいても、絵を描くし、歌を口ずさみ、音楽に合わせて踊る。
本来的にひとはみずみずしい感受性をもっており、芸術系の活動も好きなはずなのに、
だんだんと得意不得意がわかってきて、あるいは成績などの社会的評価をつけられることで、自ら心の動きを封じ込めてしまう。
もちろん素質を見極めることは大事なことだし、分別がつかないと生きてはいけないと思うけれども、
女性が男性と比べて、大人になってもやわらかい心を有している事実は、やはり一考の価値があるだろう。
得意不得意は把握しつつも、感性までは閉ざさない、その辺のバランスはなかなか難しい。

クリエイティブ系に進んだひとは、得意ということもあるので、子供のころとギャップがなく
感性を維持しているひとが多いと思う。

幼児性とは、そういった鋭敏な感覚を信じて、子供っぽいかなとか、馬鹿馬鹿しいかなという疑念が湧いてきたとしても、
素直に躊躇なく表現していくことだと考えている。

例えば街中をピンクのペンキで塗ったら面白いじゃないかとか、道を歩いているときに地球の重力がなくなってしまったらどうしようとか、
池の水をぜんぶ抜いてみたらどうなるんだろうとか(そういうテレビ番組もありましたね)、
常識人には馬鹿馬鹿しいと一蹴される思い付きかもしれないが、
そういったアイディアの種がクリエイティブのダイナミズムを生むのではないだろうか。

子供のころの感性は一生の宝だなあ、忘れないようにしないとなあと最近つくづく思っている。

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