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デザイナー樋口賢太郎が
綴る日々のことです

焼き直し

2019.06.30

ときどき行く骨董市で、越州窯青磁とされる器をだいぶ安く手に入れることができた。
安かったのは、器のひとつがカセている状態だったから。
カセているというのは、骨董用語で言うところの釉薬がボロボロと剥離することを意味する。

 

右がカセている器

越州窯青磁とは、後漢から北宋の時代に、中国の越国(現杭州)で焼かれた青磁のことで、
青磁と呼ばれているが、実際は青いというよりは、緑がかった灰褐色の釉が中心で、
明るめから暗めまで割と幅があるらしい。後漢くらいから焼かれるようになり、
のちに南宋の青磁が栄える1100年代まで続いていた。(購入後、調べた)
南宋の龍泉窯などの精緻で澄み切った空のような青磁と比べると、青さも中途半端で
大味でざっくりとしているけれど、それはそれで良さがあるという感じだろうか。
もっとも南宋の青磁に人気を奪われるかたちで衰退していったのは、大味が原因だったからかもしれないが。

 

まあバイヤーが越州青磁と言うだけなので、真偽のほどはよくわからない。

 

もし本物ならば少なくとも900年以上は昔のものになるが、
骨董市では能書きではなく、自分のアンテナに何が引っかかるかという
ハプニング(予定不調和)を楽しむものだと考えているので、その辺は深く追求しないようにしている。
見た瞬間にどれだけ心を動かされるかが大事で、柳宗悦が言うところの「直下(じきげ)に見よ」の考えに近い。

 

にも書いたことがあるが、古いものはそれだけで素晴らしい場合が多い。
時代にフィルタリングされているということもあるが、そもそも格が違うと思っている。
様々な感覚器官をテクノロジーに頼ってしまっている現代人と比べて
古代の人々はより直感的に、十全に感覚を開いて生きていたので、やはり感覚表現のレベルが深いと感じるからだ。

 

持ち帰ってみると状態は予想以上に悪く、そのまま使っていくと釉薬が全部取れてしまいそうだった。

 

自分にとっての骨董はあくまで使って楽しむものなので、鑑賞するだけでは十分ではない。

 

ニスみたいなものを引けばいいだろうかなどと考えてみたが、
再びニスが剥離してしまうと根本的な解決にならないので、近い色合いの釉薬をかけてもう一度焼いてみてはどうかと考えた。
当然自分では窯を持っているわけもなく、知り合いの陶芸家にお願いしたところ、幸いにも焼いていだたけることになった。

 

釉薬を掛けた状態

 

見えないヒビがあったりすると、高温に耐えきれずに割れてしまうかもしれず、ダメ元のチャレンジだった。
どきどきしながら結果を待っていると、無事に焼きあがったとの連絡を受けた。

 

焼き直ししてみると、釉薬もきちんと定着しており、レリーフも前よりくっきりと浮かび上がっている。
まるで現代につくられたようなフレッシュさがあり面白い。
おそらく最初に窯から出てきた瞬間はこんな感じだったんだろう。
古さは残したまま、ピカピカに生まれ変わっている様子が、良い意味での違和感を醸し出している。

 

実験が成功したことで、何を盛ろうかと考える楽しみが生まれたが、
実はこの手の釉薬の色合いはだいぶ扱いが難しいのである。

 

それについては次回

 

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たのしい通勤

2019.05.24

今年の4月から母校の多摩美で教えることになり、上野毛に通っている。

 

多摩美は、八王子と上野毛(世田谷区)に校舎があり、いま教えているのは上野毛にある統合デザイン学科の方で、
家から割と近場なのだが、いかんせん交通アクセスが悪く、どうやって通勤しようかしばらく考えていた。

 

とは言え電車を使えば1時間くらいのものなのだが、それにはあの悪夢のような渋谷駅を通らなければならない。

 

長年自宅兼のオフィスで仕事をしていると、地下鉄に乗ることがほんとうに億劫になってくる。
電車に乗れない病気とまではいかないが、車内や駅での混雑と乗り換えのハードルを高く感じてしまい、
移動手段として電車をなるべく避けるように暮らしている。
なんというか東京の生活にアダプトするということは、地下鉄移動にアダプトすることとほぼ同義なのではないだろうか。
そういう意味では20年以上住んでいるが、東京の生活にはまだまだ馴染んでいない。

 

ま、そんなこんなで思案していたのだが、いろいろと検討した結果、写真の折りたたみ自転車で通うことにした。
所要時間も30分たらずで、いまの季節は気持ち良い。
折りたたみにしたのは、雨が降った際などにタクシーや交通機関でも運べるから。

 

持ち運び用の収納袋はこれくらいの大きさに収まる

 

サドルとグリップとペダルは予めカスタムされていた

 

乗っているのはBROMTONというイギリス製のミニベロ(小径車)で、だいぶ悩んで買ったが正解だった。

 

10秒あればコンパクトに折りたためる構造もよくできているし、肝心の乗りやすさについては、ミニベロだが普通の自転車と遜色ないと思う。
もちろん大きいホイールのような進みやすさはないけれども、東京だと意外とSTOP & GOが多いので
小径車の方が走り出しが軽く、ギアも6段あり坂道も割と苦にならない。
ディティールも美しく、合理的な形をしていて、あぁ、この自転車をつくっている人たちはつくづく自転車が好きなんだなあという、
Appleの製品などに感じるのと同じ印象を受ける。

 

空気入れまで付いている

 

イギリスはどちらかと言うと、ピューリタン的生真面目なモノづくりというイメージがあるので、
やや面白みに欠ける印象があるが、生真面目さが実直さと結びつくと強いと思う。
質実剛健と言うのか、かっこつけようとする余計な自我を、生真面目さが遠ざけている効果もあるだろう。

 

GLOBE-TROTTERという旅行カバンもイギリスのブランドで、これにも実直な美しさを感じ、長年愛用している。
自我からの距離感という意味ではイギリスのモノづくりは民藝的なのかもしれない。

 

残念な点としては、グラフィック関係がややお粗末なところ。
BROMPTONのロゴのタイプフェイスはまあいいとして、四角の縁取りはちょっとどうかと思う。
空気入れにもあるアイコンのようなものが、パーツのいろんなところにあるのもうるさく感じる。
こんなにたくさん入れる必然性があるのだろうか?(たぶんない)。
専門なのでこのあたりはどうしても厳しく見てしまう。

 

あとは盗難の心配が頭をよぎる点だろうか。
安くはない自転車なので、地球ロック(物理的に動かせないモノと固定すること)できない場合は長時間の駐輪は避けたくなってしまう。
BROMPTONにはママチャリと同じような気軽さはないかも知れない。

 

しかしまあ日本では自転車の盗難率はそれほど高くないので、なるべくポジティブに捉えて、楽しみ尽くそうと思う。
ただポジティブになり過ぎて、自転車沼にハマり、高いカスタムパーツを買ってしまわないように注意しながら。

 

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お伝えしておりました、和火のクラウドファンディングですが
目標金額に到達することができました。
ご協力いただきましたみなさまありがとうございました。

 

今後は生産に励んで参ります。

 

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お伝えしております和火ですが
インスタグラムを始めました。
ご興味がある方はフォローいただけますと幸いです。

 

とりあえず反応をみたいと、キャンプファイヤーで
クラウドファンディングを行っています。
お陰様で無事に満額に達しました。

 

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長年温めてきた和火というプロジェクトがようやく始動します。
炭火を現代の生活の中でも楽しむことを目的としています。

 

設立趣意

 

少し前の日本の暮らしには炭火がありました。
暖房や調理の目的で使われていた炭火は、
やがて他の便利なもので代替できるようになり、
目にする機会がほとんどなくなりました。
しかし使わなくなっただけで、接すればその魅力を実感します。
火鉢の中で静かな音を立て沸く鉄瓶、旬の食材などを焼く楽しみ。
なによりも部屋の中に炭火があるだけで、気持ちが安らぐのです。
多少の不便さはありますが、豊かな時間を過ごせると考え、
炭火をたのしめるブランドをつくりました。

 

すいせい

グラフィックデザイナー

樋口賢太郎

 

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