このブログはデザイナー樋口賢太郎が綴る日々のことです たのしい通勤 2019.05.24 今年の4月から母校の多摩美で教えることになり、上野毛に通っている。 多摩美は、八王子と上野毛(世田谷区)に校舎があり、いま教えているのは上野毛にある統合デザイン学科の方で、 家から割と近場なのだが、いかんせん交通アクセスが悪く、どうやって通勤しようかしばらく考えていた。 とは言え電車を使えば1時間くらいのものなのだが、それにはあの悪夢のような渋谷駅を通らなければならない。 長年自宅兼のオフィスで仕事をしていると、地下鉄に乗ることがほんとうに億劫になってくる。 電車に乗れない病気とまではいかないが、車内や駅での混雑と乗り換えのハードルを高く感じてしまい、 移動手段として電車をなるべく避けるように暮らしている。 なんというか東京の生活にアダプトするということは、地下鉄移動にアダプトすることとほぼ同義なのではないだろうか。 そういう意味では20年以上住んでいるが、東京の生活にはまだまだ馴染んでいない。 ま、そんなこんなで思案していたのだが、いろいろと検討した結果、写真の折りたたみ自転車で通うことにした。 所要時間も30分たらずで、いまの季節は気持ち良い。 折りたたみにしたのは、雨が降った際などにタクシーや交通機関でも運べるから。 持ち運び用の収納袋はこれくらいの大きさに収まる サドルとグリップとペダルは予めカスタムされていた 乗っているのはBROMTONというイギリス製のミニベロ(小径車)で、だいぶ悩んで買ったが正解だった。 10秒あればコンパクトに折りたためる構造もよくできているし、肝心の乗りやすさについては、ミニベロだが普通の自転車と遜色ないと思う。 もちろん大きいホイールのような進みやすさはないけれども、東京だと意外とSTOP & GOが多いので 小径車の方が走り出しが軽く、ギアも6段あり坂道も割と苦にならない。 ディティールも美しく、合理的な形をしていて、あぁ、この自転車をつくっている人たちはつくづく自転車が好きなんだなあという、 Appleの製品などに感じるのと同じ印象を受ける。 空気入れまで付いている イギリスはどちらかと言うと、ピューリタン的生真面目なモノづくりというイメージがあるので、 やや面白みに欠ける印象があるが、生真面目さが実直さと結びつくと強いと思う。 質実剛健と言うのか、かっこつけようとする余計な自我を、生真面目さが遠ざけている効果もあるだろう。 GLOBE-TROTTERという旅行カバンもイギリスのブランドで、これにも実直な美しさを感じ、長年愛用している。 自我からの距離感という意味ではイギリスのモノづくりは民藝的なのかもしれない。 残念な点としては、グラフィック関係がややお粗末なところ。 BROMPTONのロゴのタイプフェイスはまあいいとして、四角の縁取りはちょっとどうかと思う。 空気入れにもあるアイコンのようなものが、パーツのいろんなところにあるのもうるさく感じる。 こんなにたくさん入れる必然性があるのだろうか?(たぶんない)。 専門なのでこのあたりはどうしても厳しく見てしまう。 あとは盗難の心配が頭をよぎる点だろうか。 安くはない自転車なので、地球ロック(物理的に動かせないモノと固定すること)できない場合は長時間の駐輪は避けたくなってしまう。 BROMPTONにはママチャリと同じような気軽さはないかも知れない。 しかしまあ日本では自転車の盗難率はそれほど高くないので、なるべくポジティブに捉えて、楽しみ尽くそうと思う。 ただポジティブになり過ぎて、自転車沼にハマり、高いカスタムパーツを買ってしまわないように注意しながら。 ※和火のインスタやってます。 ※ただいまブログの引越し中です。旧ブログをご覧になりたいかたはこちらにアクセス願います。 ニュース最近の仕事 コメント:0 ありがとうございました 2019.04.22 お伝えしておりました、和火のクラウドファンディングですが 目標金額に到達することができました。 ご協力いただきましたみなさまありがとうございました。 今後は生産に励んで参ります。 ※和火のインスタやってます。 ※ただいまブログの引越し中です。旧ブログをご覧になりたいかたはこちらにアクセス願います。 ニュース最近の仕事 コメント:0 インスタグラム始めました! 2019.03.29 お伝えしております和火ですが インスタグラムを始めました。 ご興味がある方はフォローいただけますと幸いです。 とりあえず反応をみたいと、キャンプファイヤーで クラウドファンディングを行っています。 お陰様で無事に満額に達しました。 ※ただいまブログの引越し中です。旧ブログをご覧になりたいかたはこちらにアクセス願います。 ニュース コメント:0 炭火を楽しむブランド「和火」はじめました! 2019.03.27 長年温めてきた和火というプロジェクトがようやく始動します。 炭火を現代の生活の中でも楽しむことを目的としています。 設立趣意 少し前の日本の暮らしには炭火がありました。 暖房や調理の目的で使われていた炭火は、 やがて他の便利なもので代替できるようになり、 目にする機会がほとんどなくなりました。 しかし使わなくなっただけで、接すればその魅力を実感します。 火鉢の中で静かな音を立て沸く鉄瓶、旬の食材などを焼く楽しみ。 なによりも部屋の中に炭火があるだけで、気持ちが安らぐのです。 多少の不便さはありますが、豊かな時間を過ごせると考え、 炭火をたのしめるブランドをつくりました。 すいせい グラフィックデザイナー 樋口賢太郎 とりあえず反応をみたいと、キャンプファイヤーで クラウドファンディングを行っています。 お陰様で無事に満額に達しました。 ※和火のインスタやってます。 ※ただいまブログの引越し中です。旧ブログをご覧になりたいかたはこちらにアクセス願います。 ニュース最近の仕事 コメント:0 誰のための掃除か 2019.02.27 来客などがある際に散らかった部屋を片付けていると その行為を来客のためにやっているのか、自分のためにやっているのかわからなくなることがある。 ゲストにとっては当然綺麗な方が望ましいと思うので片付けているわけだが、 自分をよく見せようとする気持ちもどこかにあると感じるからだ。 もっと言えば、見栄をはる気持ちというのか、普段よりも念入りに掃除をすることで、 自分はこんなにも綺麗好きなんですよ、とアピールしているような気もする。 なので純粋にゲストのためにやっているのかと問われると即答するのは難しい。 大学時代に、人を招き入れる際もあえて部屋を片付けないという友人がいた。 普段の自分に自信があるので、どんなに散らかっていてもありのままを見せられる。 片付けるのは自分に自信がないヤツがすることだと、いうのが彼の主張だった。 たしかに遊びに行ってみると、床にはほこりが溜まり、 脱ぎっぱなしの衣類はそのままで、ポルノ雑誌も隠されていない。 主張がなければ、ただのだらしないヤツという印象で終わるところだろうが 彼の演説を聞いたあとだと、散らかった様子や、ポルノを隠そうとしない姿勢にも説得力があり、 それなりに魅力を感じられるのが不思議だった。 これらのことで思い出すのは、クリエイティブディレクター佐藤雅彦さんの エッセイ集で読んだひとつの寓話である。 その話には恥ずかしがりやの冷蔵庫とふてぶてしい冷蔵庫が出てくる。 ちょうど思春期の冷蔵庫は、扉を開けることを、とても恥ずかしがる。 逆に中年期の冷蔵庫のほうは、扉を開けることにまったく躊躇がなく、むしろふてぶてしいぐらい。 思春期の冷蔵庫の様子は、見ているこちらが困ってしまうぐらい恥ずかしがるが、 中年期の様は、躊躇がないのでそうは感じない。しかし何かを失ったようでそれはそれで残念である。 だいぶ昔に読んだので記憶が曖昧だがおおよそこんな話だった。 なぜこの話を思い出したのかというと、冷蔵庫の中身と部屋の中身が同じでないかと感じているからだ。 大学時代の友人の主張は、それはそれで興味深いものであるが、 訪れたゲストがどう感じるかという視点が抜け落ちている。 衣服が散らかっているのは許容できるかもしれないが、 トイレまで掃除されていないとすると、まあたいていの人は嫌がるだろう。 つまりその主張は自己完結しているだけで、ゲストの視点は含まれていないのだ。 例えばハウスダストアレルギーがある人を前にすると、彼の主張はまったく成立しなくなってしまう。 冷蔵庫で言えば後者のほうのタイプだろう。 一方の前者の恥ずかしがりやの冷蔵庫もゲストの視点が抜けている。 何を見せたら迷惑なのかという境界線がわからないため、見せること自体を躊躇してしまうからだ。 的確な判断力がなく、見せても迷惑でないものまで隠そうとする行為に困惑はしないが、 成熟した大人の振る舞いではないだろう。 自分はと分析すると、よりよく見せようとする虚栄心について悩んでいるのだと思う。 清潔であることは、行き過ぎても問題はないかもしれない。しかしそこに虚栄心が混ざると受け手は疲れると思う。 俗に言う鼻につくという状態だ。 訪れる人がどれだけ心地よく感じられるかだけを考え、掃除をする。 とても基本的なことだし、いっけん簡単なように思えるが、 けっこう奥が深く、おそらく茶道の一期一会の精神などにも通じる話ではないだろうか。 掃除ひとつとってもなかなか難しいものだと思う。 ※和火のインスタやってます。 ※ただいまブログの引越し中です。旧ブログをご覧になりたいかたはこちらにアクセス願います。 ニュース雑考 コメント:0 < 新しい投稿 過去の投稿 > (C) Suisei All Rights Reserved.